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Digital

繁栄しているインドのアプリエコノミー

June 3, 2020 By Shivani Gopalkrishna

インド人の成人の4分の1は高血圧を患っています。そして全体の半数しか診断されておらず、高血圧の予防が出来ている人数はそのわずか10%のみです。 その重大な公衆衛生問題に取り込んでいるNPO Vital Strategiesは、バンガロール市に位置するデザインスタジオObviousと共に昨年、医療従事者向けに高血圧患者の管理をデジタルプラットフォーム上で可能にするアプリ、Simple をローンチしました。無料のアプリで、操作性が良く、患者のデータ収集を可能にします。Simpleアプリによって医療従事者は、簡単に患者の血圧データや投与する薬の記録をデジタル化にして、ダッシュボード上で患者病歴を閲覧し、アプリ内で患者をフォローアップする自動連絡機能があります。患者の効果的なモニタリングの上、いつも混雑している病院では医療従事者は患者とより充実した時間をすることにもつながります。現在、Simpleはインドにいる25万人の患者の治療を管理し、2020年内に全国またはその他途上国に導入する予定です。

Simpleアプリで患者の血圧の記録、治療のモニターリングまたはフォロアップ連絡を簡単に管理できる
Simple.orgより

Simpleのようなアプリはヘルスケアにおけるデジタル化の一つの例です。ヘルスケアの他、政府(ヘッダー画像)、金融、小売、建設、不動産といった物質的な業界でもアプリの浸透によってデジタル化が急速に進み、より多くのユーザーにサービスを提供することが可能になりました。

そして物質的な業界にデジタル化を実現するデベロッパーの需要が非常に高まっています。次のようなデータを参考にインドのアプリエコシステムの展望を描きたいと思います。

アプリ開発の求人数

@GitHubIndia

アプリ開発に欠かせないソフトウェア開発プラットフォームのGitHubは、今年の2月にインドにオフィスを設立すると発表しました。インドには16.8万GitHubのアカウントがあり、アメリカ、そして中国に続く、インドは世界の第3位のデベロッパーコミュニティです。

アメリカの政策シンクタンク Progressive Policy Institute は、インドにおけるアプリエコノミーに関して2019年9月にレポートを発表しました。レポートによると2019年8月現在にインドでは167.4万件のアプリ開発求人広告があり、2016年の120.8万件の推定より39%も増加しています。

方法論として同レポートの研究者は、アプリ開発にまつわるオンライン求人広告(Indeed.comの求人サイトより)を解析し、スキルまたはiOSやアンドロイドの知識を求める広告に集中しました。また、テック企業の他、金融機関、メディア企業、小売企業、アプリのセキュリティの求人まで分析を行いました。

レポートで発表されている最先端の国アメリカとEUのアプリエコノミー求人と比較する表は以下のとおりです。

国アプリエコノミーにおける求人推定の日付
インド167.4万2019年8月
アメリカ224.6万2019年7月
EU(スイスとノルウェーも含め)209.3万2019年4月

出典:Progressive Policy Institute


多くのアプリ開発の仕事はiOSとアンドロイドの両方のエコシステムで従事しているが、同レポートの内訳では167.4万人のデベロッパーの中87.3万人がiOSエコシステム、または135.9万人がアンドロイドエコシステムで活躍していると推定されています。

レポートの筆者が書かれているようにアプリエコノミーの従業員の数は、どれほどのスピードで社会のデジタル革命の次のステージ、つまり物質的な業界のデジタル化が実現するのかを示していると考えられています。

さらに広い経済的な側面

インドでは所得層や地域を問わずスマホの浸透が著しいです。それに伴い、あらゆるサービスの消費者または供給者に向けた多岐にわたるアプリがますます普及しています。そして、アプリインストールの統計もこの現象を反映しています。モバイルアプリデータを分析するアプリ・インテリジェンス企業Sensor Towerによると、2019年の第一四半期にインドでは45億のアプリインストール数があり、アメリカの30億アプリインストール数を上回って、世界の最大の数だと言われています。そして、アンドロイドのスマホが浸透しているためGoogleのプレイストアからのアプリのダウンロードが極めて多く見られます。

インドの経済研究シンクタンク ICRIER (Indian Council for Research on International Economic Relations) が2015年に発表された報告書によるとスマホの浸透率の各10%の増加につれて、国内総生産も1.5%増加し、それは技術のネットワーク効果による経済的な影響の拡大だと考えられています。同レポートは2024年までにデベロッパーの人数ではインドはアメリカを上回ると予測しています。


AppストアまたはGoogleプレイストアの低い配達費、更には小さいデベロッパーもスケールメリットが実現できることによって、アプリ業界は世界的なレベルで起業家の文化を生み出しています 。今後GitHubのインド事務所の設立、またFacebookやその他有力投資家によるインドの通信テクノロジー企業Jio Platformsへの大投資は従来の物質的な業界のデジタル化を更にスピードアップさせると期待されています。


インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]


参考資料

Mandel, Michael, Elliott Long. The App Economy in India. Progressive Policy Institute. September 2019.

Kathuria, R., Chowdhury, S., et al. An Inquiry into the Impact of India’s App Economy. Indian Council for Research on International Economic Relations. April 2015.

Header Image: Shutterstock.com

中小事業におけるデジタル化の波

May 3, 2020 By Shivani Gopalkrishna

先月4月21日、Facebookはインドの革新的な通信企業であるReliance Jioへ57億米ドルの投資を発表し、同社の少数株(9.99%)を取得しました。 このニュースはビジネス界で大きな関心を集め、分析されました。その結果、この投資には以下の2点が特に重要であるといわれています 。

  • 現状の危機を乗り越えることがあらゆる中小企業にとって新たなビジネス拡大のきっかけとなる
  • アメリカの有力テック企業はインドのオンラインエコシステムに進出の競争が激化する

コロナウイルスの拡大によって生じる危機は特に中小企業へ悪影響を及ぼすと考えられています。この状況下でFacebookとJioのパートナーシップは、小売業界に必要な刺激となる可能性があります。Facebookの他、Google、Microsoft、Amazon、Ciscoのアメリカのテック企業は、インドの大手サービス企業との連携や起業家の育成の為の投資ファウンドの設立で、莫大な需要が望めるビジネスチャンスを掴もうとしています。

世界一のインターネットユーザー数を誇るインドでは、中小企業のデジタル変革が加速しています。


国の中心となる中小事業のキラナ店舗


インドには6000万の中小企業があると言われています 。その多くの事業は未組織の小売業界である日用品のキラナ店舗または生活用品の店舗です。全国にある約1500万のキラナ店舗は、 その地域の日常品のニーズを満たし自宅までの配送サービスも提供しています。

現在コロナによる異常な状況では、日常品をオンラインで購入する人が急増しています。しかし、E-コマース事業に大きな刺激を与えている一方、ロックダウンによる困難または物理的な不足がE-コマース事業の弱点を明らかにしています。 キラナ店舗は各近所にあるため、配達に関してラストワンマイルの物理的なハードルを超えることができます。こういった環境の中、Reliance Jioの食料雑貨事業JioMartとFacebookが運営するチャットアプリのWhatsappの間の連携はとても面白い試みです。

ユーザーは、Whatsappチャットアプリ内でJioMartの商品を注文し、JioMartによってその注文を最寄りのキラナ店舗に割り当てられ、請求書をWhatsappで発送します。この仕組みによってユーザーを最寄りのキラナ店舗とオンラインで繫がることを可能にしています。将来、商品の注文から決済に至るまでをWhatsappチャットアプリ内で完了することを目標しています。このようにWhatsappの非常に高い普及率(インドでは4億人が利用)を活かしてキラナ店舗のデジタル化が行われています。顧客が中小事業につながり、商品をオンラインで閲覧すること、商品に関する質問の回答を得ること、また支払いもオンラインで可能にすることでスマホでのシームレスのデジタルショッピング体験が実現します。

Reliance JioとFacebook、大手の両社は取得している巨大なユーザーベースにその他サービスを販売するチャンスを手に入れる上、消費者行動データの貴重な源となると予想されます。同様にその他の大手テック企業、アメリカの有力企業もインド社会・中小企業にデジタル変革をもたらしています。


世界一のデジタル市場を開拓するアメリカのテック企業


NASSCOM (全国ソフトウェア・サービス企業協会)のクラウド・サービス市場についてのレポートによると、2022年までにインドのクラウド市場は70億米ドルの価値を超え、SaaS市場も35億米ドルに達すると予測されています。インドにおけるデジタルサービスの迅速な採択の継続は、以下の企業活動の成果だと考えられます。

Google

通信企業Airtelとパートナーシップを構築し、Airtelのクライアントである2,500大手企業、また50万の中小事業のスタートアップに、グーグルドキュメント、ドライブ、カレンダーといったグーグル・クラウドのサービスを提供しています。事業のデジタル変革を促し、GSuiteによる協調ツールと生産性ツール、そしてAirtelのデジタルビジネスサービスは中小事業におけるデジタルイノベーションを実現しています。

Amazon

今年1月にAmazon創立者ジェフ・ベゾス氏はインドに訪ねた際に、インドの中小事業に10億米ドルを投資すると発表しました(当時、インドの商人組合がAmazonの略奪的価格設定へ抗議を行いました)。その投資は中小事業のデジタル化を促進し、より多くの顧客を引きつけ現地生産の商品の輸出を促すことが目的です。

Microsoft

MicrosoftはReliance Jioとの戦略的連携を図って10年間に渡るインド社会のデジタル変革を促進する予定です。それは通信ネットワークへの接続性をはじめ、コンピューティング、ストレージソリューション、及びその他サービス・アプリケーションの提供です。そしてMicrosoftのAzureクラウドサービスを活用するためにReliance Jioと共に全国にデータセンターを設立します。更にJioはMicrosoftのクラウドとプラットフォームサービスをスタートアップに無料で提供し、中間企業に定額の料金を徴収します。また、ヴォイスとコンピュータービションの統合的なサービスをインドの主な言語で開発する予定があり、より多くのユーザーが活用することを可能にします。

Cisco

2019年にアメリカの通信機器メーカーCisco社は、インド通信企業Airtelと共に中小企業へネットワーク接続性のソリューションを提供しました。同連携ではAirtelによってSD-WANネットワークがCiscoのプラットフォーム上に開発され、集中制御であるポリシー及び一般的な管理によって中小企業のデータフローが最適化されました。


インド経済の急速なデジタル化につれて、中小事業のニーズが進化しています。アメリカのテック企業は中小事業が抱くビジネスの可能性に対して熱心に答え、革新的なパートナーシップを構築し、デジタル変革を推し進めるためにあらゆるツールまたはサービスを提供しています。そしてそれは同大手テック企業にとっても大きな利益を生み出しています。インドの中小企業にサービスを提供しながら、彼らの数億人にもなる顧客の消費パターン(超ローカルの)のデータを解析し、それはデジタル広告ビジネスの貴重な収入源となり、また新たなサービスにつながると考えられます。


インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]


参考資料:

Facebook’s investment in Jio takes on US tech firms betting on India. April 22,2020 

Google partners with Airtel to offer G Suite to small, medium businesses. January 20,2020  

Jio and Microsoft announce alliance to accelerate digital transformation in India. August 12, 2019

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