世界3位の自動車市場であるインド。しかしながら電気自動車(EV)の導入は圧倒的に遅れています。今年に入り、ようやくEV業界に進展が見え始めました。電気自動車より先にEVの二輪車、三輪車、交通機関のバス、共用タクシー、農業用自動車の導入が2年内に実現されると予測され、好ましいマーケット状況によってますます成長していくと見込まれています。更に排出ガスを15%削減すると期待されています。
電動スクーターの登場
2013年に立ち上げられた Ather Energy(以下Ather)は、インド初のインテリジェント・エレクトリック・スクーターを創り出しました。2018年の9月に電動スクーターの二つのモデルが南インドのバンガロールに登場し、今月にはチェンナイに導入される予定です。インドでは現時点で1000台の電動スクーターが走り、公共の充電ネットワークであるAther Grid も整い始めています 。更にAtherは大手EC事業Flipkartのファウンダー、大手二輪車企業Hero Group、そしてVCのTiger Globalから総額9100万米ドルの資金を調達し、250人のエンジニアを採用するなど積極的に事業拡大を行なっています。
上のモデル450の電動スクーターは時速80kmで走り、満充電での走行可能距離は75 kmです。時速ゼロから40 kmまで3.9秒で加速し、リバース走行の機能により簡単にパーキングが可能です。同品に搭載されているタッチスクリーンダッシュボードはモバイルアプリとの連携によって二輪車の安全をモニター、機能の操作やソフトのアップグレードが可能です。またAtherはユーザーの満足度を非常に重視しているので、フィードバックによりユーザーから要望の高い機能を提供するようにしています。暗い環境ではヘッドランプが20秒後に消灯する機能が例に挙げられます。そして、消費者を惹き付けるために革新的な購入プランや、リース契約のオプションも提供しています。
ショッピングモールや公共駐車場などに設置されている公共の充電ネットワーク(現在バンガロールに31箇所あるAther GridはAtherのスクーターだけに限らず、ファストチャージ(高速充電)で1時間に電池80%の充電ができます。充電の決済はスマホアプリで行えます。
20代後半のAther創立者の二人は、インド工科大学(IIT)チェンナイ校の機械工学部の卒業生です。 試作品は 2年前に仕上がっていましたが、ゼロから製品を設計構築することに拘ったので予定より 多くの時間がかかりました。その結果としてインドの需要を完璧に満たした製品を提供することに成功しました。
郵送手段4分の3は二輪車であるインドでAtherは大胆かつ斬新なEV市場を開拓しています。下記に記述する通り、現在の市況は電動二輪車の到来を告げています。
EV二輪車を促進する市場環境
- インドの巨大な二輪車市場
インドの乗り物・自動車業界の統計によると2017年に2500万台が販売され、その内2000万台は二輪車でした。世界で最も大きい二輪車市場はインドであり、インドの二輪車企業は国内市場に留まらず、東南アジア、アフリカ、そして南米にまで拡大しています。インドには活発的な二輪車市場に魅力的な製品を提供するための、部品の生産・組み立て・開発能力が備わっていると考えられます。更にスケールメリット(規模の経済性)を活かして供給の基盤を作り、製品開発の強化が実現すれば、インドが世界の電動二輪車業界をリードする可能性が大いにあります。
- 研究開発能力があるエコシステム
電気自動車バッテリーの研究で有名 なインド工科大学(IIT)チェンナイ校にある Centre for Battery Engineering and Electric Vehicles が、バッテリー開発をはじめバッテリーの再利用、充電インフラ開発といった研究プロジェクトを行なっています。同センターはインドの大手 OEM の Tata Motors, Mahindra & Mahindra, Ashok Leyland, Kineticなどと共同研究を実施しています。IITチェンナイ校は Ather Energy の他、リチウムイオン電池開発のスタートアップ Grinntech のような先端技術スタートアップを世に生み出す役割を果たしています。
- ITの活用
GPS機能のスマホ、モビリティアプリ、自動車データ収集・分析といったITの活用によってEVはより効率的に運転します。EVに関わる変動費の削減につながる上、固定コストを補うことができます。そしてEVからデータ収集、行動履歴やフィードバックは技術やユーザー満足度の向上に繋がります。ユーザーはスマホからの自動車の操作や電池のモニターなど便利な機能を利用できます。優れたIT業界のノウハウを活かすことが大きなメリットをもたらしています。
- 政府の対策
中国の 大成功したEV普及政策を参考にして、インド政府もEV業を促進するための取り組みを強化しています。FAME (Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicles)という名の取り組みでは、政府は2022年までに14億米ドルをEV製造・利用を促す政策、または充電インフラに投資すると発表しています。交通機関に電動バスを活用することを重視しています。また、7月に発表した年度予算でインド政府は、EV購入を促すために購入者にいくつかの免税を与え、月払いを奨励しています。さらに銀行もEV購入に向けたサポートプランを提供しています。
今後小型車(二輪車・三輪車)に活用する小型電気バッテリーの革新が拍車を掛け、インド企業は電動二輪車・三輪車の製造でリーダーシップを発揮すると考えられています。
大手自動車メーカー、バッテリーメーカー、スタートアップ、エネルギー企業はインドのEV事業に取り組んでいますがハードルはいくつかあります。インドでは比較的安いディーゼルエンジン自動車と天然ガス自動車が激しい競争しています。EV自動車の電費がディーゼル自動車の燃費と並ぶのは2020代半ばになると見込まれています。
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