先月4月21日、Facebookはインドの革新的な通信企業であるReliance Jioへ57億米ドルの投資を発表し、同社の少数株(9.99%)を取得しました。 このニュースはビジネス界で大きな関心を集め、分析されました。その結果、この投資には以下の2点が特に重要であるといわれています 。
- 現状の危機を乗り越えることがあらゆる中小企業にとって新たなビジネス拡大のきっかけとなる
- アメリカの有力テック企業はインドのオンラインエコシステムに進出の競争が激化する
コロナウイルスの拡大によって生じる危機は特に中小企業へ悪影響を及ぼすと考えられています。この状況下でFacebookとJioのパートナーシップは、小売業界に必要な刺激となる可能性があります。Facebookの他、Google、Microsoft、Amazon、Ciscoのアメリカのテック企業は、インドの大手サービス企業との連携や起業家の育成の為の投資ファウンドの設立で、莫大な需要が望めるビジネスチャンスを掴もうとしています。
世界一のインターネットユーザー数を誇るインドでは、中小企業のデジタル変革が加速しています。
国の中心となる中小事業のキラナ店舗
インドには6000万の中小企業があると言われています 。その多くの事業は未組織の小売業界である日用品のキラナ店舗または生活用品の店舗です。全国にある約1500万のキラナ店舗は、 その地域の日常品のニーズを満たし自宅までの配送サービスも提供しています。
現在コロナによる異常な状況では、日常品をオンラインで購入する人が急増しています。しかし、E-コマース事業に大きな刺激を与えている一方、ロックダウンによる困難または物理的な不足がE-コマース事業の弱点を明らかにしています。 キラナ店舗は各近所にあるため、配達に関してラストワンマイルの物理的なハードルを超えることができます。こういった環境の中、Reliance Jioの食料雑貨事業JioMartとFacebookが運営するチャットアプリのWhatsappの間の連携はとても面白い試みです。
ユーザーは、Whatsappチャットアプリ内でJioMartの商品を注文し、JioMartによってその注文を最寄りのキラナ店舗に割り当てられ、請求書をWhatsappで発送します。この仕組みによってユーザーを最寄りのキラナ店舗とオンラインで繫がることを可能にしています。将来、商品の注文から決済に至るまでをWhatsappチャットアプリ内で完了することを目標しています。このようにWhatsappの非常に高い普及率(インドでは4億人が利用)を活かしてキラナ店舗のデジタル化が行われています。顧客が中小事業につながり、商品をオンラインで閲覧すること、商品に関する質問の回答を得ること、また支払いもオンラインで可能にすることでスマホでのシームレスのデジタルショッピング体験が実現します。
Reliance JioとFacebook、大手の両社は取得している巨大なユーザーベースにその他サービスを販売するチャンスを手に入れる上、消費者行動データの貴重な源となると予想されます。同様にその他の大手テック企業、アメリカの有力企業もインド社会・中小企業にデジタル変革をもたらしています。
世界一のデジタル市場を開拓するアメリカのテック企業
NASSCOM (全国ソフトウェア・サービス企業協会)のクラウド・サービス市場についてのレポートによると、2022年までにインドのクラウド市場は70億米ドルの価値を超え、SaaS市場も35億米ドルに達すると予測されています。インドにおけるデジタルサービスの迅速な採択の継続は、以下の企業活動の成果だと考えられます。
通信企業Airtelとパートナーシップを構築し、Airtelのクライアントである2,500大手企業、また50万の中小事業のスタートアップに、グーグルドキュメント、ドライブ、カレンダーといったグーグル・クラウドのサービスを提供しています。事業のデジタル変革を促し、GSuiteによる協調ツールと生産性ツール、そしてAirtelのデジタルビジネスサービスは中小事業におけるデジタルイノベーションを実現しています。
Amazon
今年1月にAmazon創立者ジェフ・ベゾス氏はインドに訪ねた際に、インドの中小事業に10億米ドルを投資すると発表しました(当時、インドの商人組合がAmazonの略奪的価格設定へ抗議を行いました)。その投資は中小事業のデジタル化を促進し、より多くの顧客を引きつけ現地生産の商品の輸出を促すことが目的です。
Microsoft
MicrosoftはReliance Jioとの戦略的連携を図って10年間に渡るインド社会のデジタル変革を促進する予定です。それは通信ネットワークへの接続性をはじめ、コンピューティング、ストレージソリューション、及びその他サービス・アプリケーションの提供です。そしてMicrosoftのAzureクラウドサービスを活用するためにReliance Jioと共に全国にデータセンターを設立します。更にJioはMicrosoftのクラウドとプラットフォームサービスをスタートアップに無料で提供し、中間企業に定額の料金を徴収します。また、ヴォイスとコンピュータービションの統合的なサービスをインドの主な言語で開発する予定があり、より多くのユーザーが活用することを可能にします。
Cisco
2019年にアメリカの通信機器メーカーCisco社は、インド通信企業Airtelと共に中小企業へネットワーク接続性のソリューションを提供しました。同連携ではAirtelによってSD-WANネットワークがCiscoのプラットフォーム上に開発され、集中制御であるポリシー及び一般的な管理によって中小企業のデータフローが最適化されました。
インド経済の急速なデジタル化につれて、中小事業のニーズが進化しています。アメリカのテック企業は中小事業が抱くビジネスの可能性に対して熱心に答え、革新的なパートナーシップを構築し、デジタル変革を推し進めるためにあらゆるツールまたはサービスを提供しています。そしてそれは同大手テック企業にとっても大きな利益を生み出しています。インドの中小企業にサービスを提供しながら、彼らの数億人にもなる顧客の消費パターン(超ローカルの)のデータを解析し、それはデジタル広告ビジネスの貴重な収入源となり、また新たなサービスにつながると考えられます。
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参考資料:
Facebook’s investment in Jio takes on US tech firms betting on India. April 22,2020
Google partners with Airtel to offer G Suite to small, medium businesses. January 20,2020
Jio and Microsoft announce alliance to accelerate digital transformation in India. August 12, 2019
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