Google地図の事例
デザイン×テクノロジーの境界線で活躍し続けてきたジョン・マエダの言葉です。
The business opportunity for the future thinking designer is inclusion.
John Maeda
Googleは「次の10億ユーザー」を引き込むために多様性があるユーザーをプロダクト設計のプロセスに参加させ、包括的なアプローチを採用しています。インドに行う同社のユーザーリサーチについて説明します。
インドは、Googleのユーザーデータによると、世界最大の二輪車市場です。そのインドで、モーターバイカーがGoogle地図アプリを平均30秒程度で閉じてしまい、活用が進んでいないことが明らかになりました。もともとカーナビとして設計された地図アプリが、広がりつつある新興国のユーザーになぜ好ましくないかの問いへの、答えを見つけるため、インドとインドネシアにエンジニア、UXデザインナ、リサーチャー、プロダクトマネージャー、マーケッター含めた多様なリサーチチームを派遣しました。
ユーザーの環境に没入してリサーチを行った結果、もともとの仮説(ユーザー行動、プロダクトの利便性に関する仮説)は間違いだったと気がつきます。
Googleのリサーチチームはインドのバイカーをインタビューし、一日の生活のパターンの把握につとめ、渋滞が激しい環境でのバイクの乗り方を理解するために乗車風景を撮影しました。遠く離れたプロダクト開発チームが、バイカーが日々どのような生活環境のなかでバイクに乗っているのかを深く理解できるよう、綿密なユーザーリサーチを行ったのです。
結論として明確になったのは、バイカーは二輪車に乗る前に地図アプリを見て方向や目印を覚えるので、その利便性を高めると有用だということ。また、乗車中に活用できる、路線や到着時間の音声ガイドが必要になること。
豊かなユーザーインサイトよりGoogleの地図アプリの改善が行われました。地図アプリに「バイカーモード」を導入したのです。バイカーの利用を意識したインターフェイスは、目印をハイライトするよりシンプルなデザインに変更。渋滞を避けるための代替路線を提示するといった機能も搭載されました。バイカーモードは南米、東南アジア、などでも導入し、500万人のデイリーユーザー数を達成しました(バイカーモードの導入の前、地図アプリのデイリーユーザー数は100万人でした)。
こちらのリサーチプロジェクトについて書かれているGoogleデザインの記事「Designing Maps for Motorbikes」にはユーザーのローカルコミュニティーに入り込み、ユーザーとなる人々と共感し合える関係を築くことはより優れたプロダクトおよびより包摂的なサービスの開発につながると強調されています。
Googleは新興国ユーザー向け地図アプリの他、決済アプリのTez(インド専用)、モバイル定額料金利用が多いことに配慮しYouTubeの仕様を最適化し、オフラインウェブ検索などのローカル化といった新たなサービスが開発されており、同社の「次の10億人」市場を動かしています。
新興国の経済成長と共に、あらゆるユーザーを考慮に入れて包摂的なプロダクトをデザインする必要があります。テックプロダクト以外のサービス・商品の販売においても、対象となる消費者の生き方、環境、ニーズ、希望、直面する課題などを理解することが重要です。
変化が激しい多様性があるインドでの、様々なユーザーを重視するユーザー・エクスペリエンス・リサーチはマーケットのさらなる理解につながります。ユーザーが存在する「文脈」から引き出すインサイトはビジネスのプロダクトの設計の他、ブランド戦略、マーケッティング・コミュニケーションの指針となります。
インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]