コロナウイルス感染の拡大に伴う5週間に及ぶロックダウンは、インド に新たな危機をもたらしています。中でも都市部で働く地方からの移住労働者は、ロックダウンにより賃金を稼げず飢餓に直面した過酷な状況下にいます 。
ニュースでロックダウンが話題になった瞬間に、あらゆるNGO、食事を配達するスタートアップ、大手企業などが動き始め移住労働者に食料または金銭的な支援のための資金を調達し、リソースを動員しました。そのあらゆるキャンペーンはかなり早い段階で大きな影響を与えています。インドで有意義なキャンペーンが実現した理由の一つに、クラウドファンディングプラットホームが充実していることが考えられます。
クラウドファンディングプラットフォームの著しい成長
現在のロックダウンの最中に共有タクシーサービスのUber社は、病院や食料のような生活に不可欠のサービスへ通勤や配達のための車を提供しています。更に同社はドライバー達の生活をサポートするために、Milaap というクラウドファンディングプラットホームで「Uber Care Driver Fund」のキャンペーンを通して資金を調達しています。下の画像は同キャンペーンのスクリーンショットです。
感情に訴えるストーリーテリング
クラウドファンディングアプリ(スマホ・ウェブ)では良いUXデザインが活用されていてユーザーは簡単かつ直感的に資金調達のキャンペーンを作成することが出来ます。キャンペーンの成功は、インパクトのあるストーリーにかかっているのでキャンペーン中は写真またはビデオを投稿し、支援者に思いが伝わるように魅力的なテンプレートで提供しています。また医療キャンペーンの場合、病院側が治療に関する情報などを提供することによって、透明性または信頼性を高めています。キャンペーンの目的によってマーケティング専門家からのキャンペーンの作成や実行に関してのコンサルティングサービスを受けることが出来ます。
Uber Care Driver Fundもストーリーを活用してユーザーである市民の心へ伝わるようにしています。
スマホの高い普及率・FacebookやWhatsAppの巨大なユーザーベース
2019年第三四期に発表されたFacebookのユーザー数は主にインドとインドネシアだといいます。インドではマンスリーアクティブユーザー数は3.28億人であり、同社が運営している大人気のチャットアプリWhatsAppは、4億人(世界人口の約3分の1 )という極めて多いユーザーが利用しています。
クラウドファンディングキャンペーンの作成者は自身のネットワークを活かせる理由から、キャンペーンの成功はソーシャルメディアやチャットアプリの普及率に依存していると考えられています。クラウドファンディングプラットフォーム運営側も保有するネットワークを使ってキャンペーンの宣伝を行っています。
そして宣伝の他、金銭の振り込みもスマホで簡単に行えるようにデジタル化しています。スマホ決済アプリのPaytmやインド政府が運営しているデジタル決済プラットフォームやクレジットカードで手続きが可能です。
Uberのキャンペーンでは FacebookまたはWhatsAppの共有ボタンがあり、またデジタルペイメントPaytmやUPIへのリンク機能もあります。
医療のためのクラウドファンディング
インド 政府の貧しい人々に向けた健康保険は、がんの手術や移植手術のような特別な治療に対して資金が全く足りていません。また、貧しくない中間層は政府の健康保険が使えないため治療費の支払いに追われています。そして全体の約2割のインド人しか民間保険を持っていないといわれています。
保険に入っていない多くのインド人にとって、高い民間医療と不足している国民医療保障制度の間の大きな隔たりを埋めてくれるクラウドファウンディングプラットフォームは、人気の選択肢です。ImpactGuru、Ketto、Milaapといったプラットフォームは重要な架け橋を提供しています。同クラウドファンディングプラットフォームの6割のキャンペーンは医療のための資金調達が目的です。
クラウドファンディングは医療に欠かせない為、クラウドファンディングプラットフォームはApollo, Aster, Fosterという大手民間病院グループとの直接的な関係を構築し、シームレスな資金調達キャンペーンを実現しています。病院と深い関わりがあるためキャンペーンに専門医師から治療の必要性の説明、また治療の請求書が確かめることができ、キャンペーンの透明性に繋がります。
2018年に大手病院グループApollo Hospitals Groupは、ImpactGuruに200万米ドルを投資し、各地70棟の系列病院の患者がImpactGuruのプラットフォームを利用して無料でキャンペーンを作成することを可能にしました(病院側は手数料を支払っています)。
上記のようにクラウドファンディングプラットフォームは、従来の制度の隙間を埋めようとしています。この現象は医療分野で一際目立って現れている一方で 、教育、社会的な活動、クリエーターのプロジェクトなどの新しいビジネスアイディアの実現に至るまでクラウドファンディングが活用されています。同サービスは、良いプロダクトデザインによって信頼性を確立しています。そしてクラウドファンディングが日常生活に普及したことによって全般的にマインドセットの転換が起き、インド人がデジタルに精通していることを強く印象付けられます 。
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