著名なベンチャーキャピタリストであるメアリー·ミーカー氏が、6月にシリコンバレーで待望の「Internet Trends 2019」レポートを発表。その興味深い報告書は、インターネットのアクティブユーザーが2018年の時点で世界人口の51%である38億人に達し、前年比で増加していると述べています(前年は世界総人口の49%である36億人)。
世界のインターネット利用者数のうち、中国が世界一の21%を占め、次にインド12%、そしてアメリカ8%と並びます。下記の表を見ると中国と特にインドは、まだインターネット普及率が低く、アメリカと比べ今後の成長の可能性を期待されています。
「Jio」がインドに起こしたデジタル革命
石油から小売に至るまで幅広い事業を展開するリライアンス·インダストリーズ。
その社長である大富豪ムケシュ·アンバニ氏は、2016年に「リラインス·ジオ」(以下「Jio」)を設立し、デジタル業に参入しました。350億米ドルを投資し、まだ道路がない地域も含めインド全域を、初の4Gネットワークで覆うことを始めました。最初の時点では無料電話とメッセージ、または無料データ使い放題プランを提供し、半年後にそのサービスを低価格で販売しました。通信業界の平均の4分の1の価格でサービスを提供することにより、遅れて市場に導入されたJioは、インドにおけるデジタル革命を引き起こしています。Jioはヒンディ語で「生きる」を意味します。「我々は通信企業ではなく、デジタルプラットフォームを構築しています。
ミーカー氏のレポートでは、Jioの登場以来インターネットの普及率が急増し、2019年にデータ利用は約18エクサバイト (EB)で、前年の倍になったと述べています。ネットワークのインフラの整備をものともせず、Jioにより映画、音楽、チャット、決済、ニュース、ファッション、多岐にわたるアプリが存在します。ミーカー氏によるとリライアンス社はオンラインとオフラインリテイル(小売)プラットフォームのハイブリッド事業の創業によって、実小売店舗とデジタルのインフラサービスを繋げ、加入者は3億人に上り、一年間でユーザー数を倍に増加させるという業績を達成しました。
アンバニ氏はJioの創立以来こう語ります「我々は通信企業ではなく、デジタルプラットフォームを構築しています」。昨年8月に行われた株主総会では、Jioの可能性について次の通りに説明しました。「同プラットフォームは、リライアンス·リーテイル店舗に3.5億人の顧客、3億人のJio加入者、そして全インドにいる3,000万人の小売商人を繋げます」。アンバニ氏はインフラを整備し、サービス業界の中心人物になると考えられています。
Jioは数億人に安いインターネットサービスを提供しながら、世界のテクノロジー、そして小売企業に市場を開放し、そればかりでなく低所得層者のための商品も開発しています。低額データを利用するための低額Jioスマホ(約1,000円)を販売し、読み書き能力のない人が、音声機能やスワイプで使用できるアプリも開発されています。これによって富裕層と低所得の格差を縮め、デジタル世界へのアクセスを広げています。
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Jioが与えるインパクト
Jioが与えるインドの著しいデジタル化への影響を理解するために、ミーカー氏のリポートの他、米経済誌のウォールストリートジャーナルの記事、YoutubeまたはGoogleのインド展開にまつわるニュースを参考し、以下のようにまとめました。
- 月間データ量は570%に上がる
- インドでのインターネットユーザー数、そしてGoogle Playストアのアプリのダウンロード件数はアメリカでのダウンロード件数を上回る
- Jioのスマホはフィーチャー・フォン市場(スマホの下に位置する中位の携帯電話)47%を獲得し、販売シェアでサムソン社を抜く
- E-コマースの爆発的な成長を引き起こしている
- Youtube, Netflixのユーザー数は5億人達成し、低額スマホで利用できるようになり、今後間違いなく映像配信は中心になる
- 地域の多様な言葉でサービスを提供することが重要になる
- 読み書き能力のないユーザー向け直感で理解できるスマホまたはアプリの開発することが重要になる
予想外にJioはインドに大きな転換をもたらしています。ブロードバンドサービスも提供し始め、デジタルサービス業の急上昇の上、海外または国内のスタートアップ・テックエコシステムにも極めて有益であると思われます。
インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]
参考資料
- Internet Trends 2019. Meeker, Mary. June 2019. (Pg 11, Pg 62-63).
- Two Years Ago India Lacked Fast, Cheap Internet – One Billionaire Changed All That. Wall Street Journal, September 2018.