「コンシューマは自身に対する評価、そして自文化への解釈によって商品を有意義なものにする」
人類学者サム・ラドナ氏
化粧品、美容製品 またファッション製品の大手ECサイトNykaaは先月に歴史的な新規株式を公開し、50代 の女性CEOは一代でインドの億万長者となりました。営利事業であるNykaa社のビジネスモデル、そして大成功しているマーケティング戦略が注目を浴びています。
9年前に設立されたNykaa社の95%の売り上げは、同社のECサイトまたアプリであり完全にデジタル事業であると言えます。デジタル販売を伸ばしているデジタルマーケティング戦略によってソーシャルメディアでは1260万人のフォロワーを持ち、ブランドに忠誠心を持つインフルエンサーコミュニティーを構築しています。
メイク方法を紹介するビデオやブログ投稿、美容またファッションに関するその他の魅力的なコンテンツを投稿している約1,300名のインフルエンサー達によってNykaa社は特定のオーディエンスをターゲットにし、効率よく顧客を掴み顧客維持率を高めていると考えられています。Nykaa社の充実したアフィリエイト・プログラムに参加するインフルエンサーまたブロガーは、フォロワーと製品の紹介ビデオ(メイク方法など)などのコンテンツと共に製品を購入するためのリンクを共有し、訪問者がそのリンクをたどって商品を購入すればコミッションを手に入れます 。それらの化粧品・美容商品に対する指導ビデオ・コンテンツはエンターテインメントとして美容スキルを教え、顧客を引き寄せることでNykaa製品の需要を増大させていると考えられています。
このようにインフルエンサーやコンテンツ・クリエーターを活かした事でNykaaのFace Book・Instagram・You Tube Channelでは平均の月間アクティブユーザー数が3〜3.5億人を達成しています。さらに、Nykaaの爆発的な人気に便乗するように若いボリウッド女優はブランドと連携した特別商品をローンチし、事業の信頼を高めることに尽力しています。
このようなデジタルマーケティング戦略とインフルエンサーの活用は低コストで行われているため極めて効果的な戦略であると考えられ、その他のECプラットフォームや消費者向けのブランドも同様な戦略を実践に移しています。
ユーザー生成のコンテンツ
インフルエンサーが投稿するコンテンツの他、大手消費者ブランドは一般ユーザーの自己表現力も活かせるようになっています。昨年コロナウイルスによるロックダウンにおいては「オレオ」クッキーブランドを所有するモンデリーズ・インディアは消費者との交流として「家でオレオと一緒〜」(#AtHomeWithOreo)キャンペーンを企画しました。
キャンペーンの参加者はオレオを利用する新しいレシピ、家族と一緒に過ごす時間、ロックダウン中の生活、新しい趣味などの 動画や写真をソーシャルメディアで共有していました。キャンペーンの動画の閲覧者数は2900万数で、2.49億インプレッション(再生回数)を達成しました。
オレオのキャンペーンは、特に家に閉じ込められた人々に自分の生活や思い、自己表現を促しコロナ禍の経験に対する感情に共感し合うことで顧客との関係を強化し、ブランドの存在感を高めました。
ふさわしいクリエーターを活用し、適切なメッセージを伝える
様々な選択肢、また商品に対する情報があふれている一方で商品に対して信頼が欠けている現代では、ブランドはコンシューマの信用を得ることが最も重要です。コンシューマは常にブランドとのより深い関係性 、また真正性のある有意義な繋がりを求めています。上記の例が示しているようにNykaaとオレオのブランドはインフルエンサーやユーザー生成コンテンツを上手に活かし、顧客との関係を強化し、ブランドの存在感、消費者想起率そして売り上げを伸ばすことに成功しました。
ブランドはコンシューマの置かれている状況、マインドセット、悩みと言った価値観をコンシューマの文化文脈で解釈することが非常に重要です。そうすることでコンシューマと共感できるインフルエンサーまたクリエーターを活用することにつながり、時代にふさわしいコンテンツの作成が可能になります。このようにして、製品は消費者にとって意味のあるものになっていきます。
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ヘッダー画像:インド映画産業、ボリウッド女優はインスタグラムでNykaaの化粧品のチュートリアル動画を投稿している。(NykaaのInstagramより)