インド人の成人の4分の1は高血圧を患っています。そして全体の半数しか診断されておらず、高血圧の予防が出来ている人数はそのわずか10%のみです。 その重大な公衆衛生問題に取り込んでいるNPO Vital Strategiesは、バンガロール市に位置するデザインスタジオObviousと共に昨年、医療従事者向けに高血圧患者の管理をデジタルプラットフォーム上で可能にするアプリ、Simple をローンチしました。無料のアプリで、操作性が良く、患者のデータ収集を可能にします。Simpleアプリによって医療従事者は、簡単に患者の血圧データや投与する薬の記録をデジタル化にして、ダッシュボード上で患者病歴を閲覧し、アプリ内で患者をフォローアップする自動連絡機能があります。患者の効果的なモニタリングの上、いつも混雑している病院では医療従事者は患者とより充実した時間をすることにもつながります。現在、Simpleはインドにいる25万人の患者の治療を管理し、2020年内に全国またはその他途上国に導入する予定です。
Simpleアプリで患者の血圧の記録、治療のモニターリングまたはフォロアップ連絡を簡単に管理できる
Simple.orgより
Simpleのようなアプリはヘルスケアにおけるデジタル化の一つの例です。ヘルスケアの他、政府(ヘッダー画像)、金融、小売、建設、不動産といった物質的な業界でもアプリの浸透によってデジタル化が急速に進み、より多くのユーザーにサービスを提供することが可能になりました。
そして物質的な業界にデジタル化を実現するデベロッパーの需要が非常に高まっています。次のようなデータを参考にインドのアプリエコシステムの展望を描きたいと思います。
アプリ開発の求人数
アプリ開発に欠かせないソフトウェア開発プラットフォームのGitHubは、今年の2月にインドにオフィスを設立すると発表しました。インドには16.8万GitHubのアカウントがあり、アメリカ、そして中国に続く、インドは世界の第3位のデベロッパーコミュニティです。
アメリカの政策シンクタンク Progressive Policy Institute は、インドにおけるアプリエコノミーに関して2019年9月にレポートを発表しました。レポートによると2019年8月現在にインドでは167.4万件のアプリ開発求人広告があり、2016年の120.8万件の推定より39%も増加しています。
方法論として同レポートの研究者は、アプリ開発にまつわるオンライン求人広告(Indeed.comの求人サイトより)を解析し、スキルまたはiOSやアンドロイドの知識を求める広告に集中しました。また、テック企業の他、金融機関、メディア企業、小売企業、アプリのセキュリティの求人まで分析を行いました。
レポートで発表されている最先端の国アメリカとEUのアプリエコノミー求人と比較する表は以下のとおりです。
国 | アプリエコノミーにおける求人 | 推定の日付 |
インド | 167.4万 | 2019年8月 |
アメリカ | 224.6万 | 2019年7月 |
EU(スイスとノルウェーも含め) | 209.3万 | 2019年4月 |
出典:Progressive Policy Institute
多くのアプリ開発の仕事はiOSとアンドロイドの両方のエコシステムで従事しているが、同レポートの内訳では167.4万人のデベロッパーの中87.3万人がiOSエコシステム、または135.9万人がアンドロイドエコシステムで活躍していると推定されています。
レポートの筆者が書かれているようにアプリエコノミーの従業員の数は、どれほどのスピードで社会のデジタル革命の次のステージ、つまり物質的な業界のデジタル化が実現するのかを示していると考えられています。
さらに広い経済的な側面
インドでは所得層や地域を問わずスマホの浸透が著しいです。それに伴い、あらゆるサービスの消費者または供給者に向けた多岐にわたるアプリがますます普及しています。そして、アプリインストールの統計もこの現象を反映しています。モバイルアプリデータを分析するアプリ・インテリジェンス企業Sensor Towerによると、2019年の第一四半期にインドでは45億のアプリインストール数があり、アメリカの30億アプリインストール数を上回って、世界の最大の数だと言われています。そして、アンドロイドのスマホが浸透しているためGoogleのプレイストアからのアプリのダウンロードが極めて多く見られます。
インドの経済研究シンクタンク ICRIER (Indian Council for Research on International Economic Relations) が2015年に発表された報告書によるとスマホの浸透率の各10%の増加につれて、国内総生産も1.5%増加し、それは技術のネットワーク効果による経済的な影響の拡大だと考えられています。同レポートは2024年までにデベロッパーの人数ではインドはアメリカを上回ると予測しています。
AppストアまたはGoogleプレイストアの低い配達費、更には小さいデベロッパーもスケールメリットが実現できることによって、アプリ業界は世界的なレベルで起業家の文化を生み出しています 。今後GitHubのインド事務所の設立、またFacebookやその他有力投資家によるインドの通信テクノロジー企業Jio Platformsへの大投資は従来の物質的な業界のデジタル化を更にスピードアップさせると期待されています。
インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]
参考資料
Mandel, Michael, Elliott Long. The App Economy in India. Progressive Policy Institute. September 2019.
Kathuria, R., Chowdhury, S., et al. An Inquiry into the Impact of India’s App Economy. Indian Council for Research on International Economic Relations. April 2015.
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