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Digital

繁栄しているインドのアプリエコノミー

June 3, 2020 By Shivani Gopalkrishna

インド人の成人の4分の1は高血圧を患っています。そして全体の半数しか診断されておらず、高血圧の予防が出来ている人数はそのわずか10%のみです。 その重大な公衆衛生問題に取り込んでいるNPO Vital Strategiesは、バンガロール市に位置するデザインスタジオObviousと共に昨年、医療従事者向けに高血圧患者の管理をデジタルプラットフォーム上で可能にするアプリ、Simple をローンチしました。無料のアプリで、操作性が良く、患者のデータ収集を可能にします。Simpleアプリによって医療従事者は、簡単に患者の血圧データや投与する薬の記録をデジタル化にして、ダッシュボード上で患者病歴を閲覧し、アプリ内で患者をフォローアップする自動連絡機能があります。患者の効果的なモニタリングの上、いつも混雑している病院では医療従事者は患者とより充実した時間をすることにもつながります。現在、Simpleはインドにいる25万人の患者の治療を管理し、2020年内に全国またはその他途上国に導入する予定です。

Simpleアプリで患者の血圧の記録、治療のモニターリングまたはフォロアップ連絡を簡単に管理できる
Simple.orgより

Simpleのようなアプリはヘルスケアにおけるデジタル化の一つの例です。ヘルスケアの他、政府(ヘッダー画像)、金融、小売、建設、不動産といった物質的な業界でもアプリの浸透によってデジタル化が急速に進み、より多くのユーザーにサービスを提供することが可能になりました。

そして物質的な業界にデジタル化を実現するデベロッパーの需要が非常に高まっています。次のようなデータを参考にインドのアプリエコシステムの展望を描きたいと思います。

アプリ開発の求人数

@GitHubIndia

アプリ開発に欠かせないソフトウェア開発プラットフォームのGitHubは、今年の2月にインドにオフィスを設立すると発表しました。インドには16.8万GitHubのアカウントがあり、アメリカ、そして中国に続く、インドは世界の第3位のデベロッパーコミュニティです。

アメリカの政策シンクタンク Progressive Policy Institute は、インドにおけるアプリエコノミーに関して2019年9月にレポートを発表しました。レポートによると2019年8月現在にインドでは167.4万件のアプリ開発求人広告があり、2016年の120.8万件の推定より39%も増加しています。

方法論として同レポートの研究者は、アプリ開発にまつわるオンライン求人広告(Indeed.comの求人サイトより)を解析し、スキルまたはiOSやアンドロイドの知識を求める広告に集中しました。また、テック企業の他、金融機関、メディア企業、小売企業、アプリのセキュリティの求人まで分析を行いました。

レポートで発表されている最先端の国アメリカとEUのアプリエコノミー求人と比較する表は以下のとおりです。

国アプリエコノミーにおける求人推定の日付
インド167.4万2019年8月
アメリカ224.6万2019年7月
EU(スイスとノルウェーも含め)209.3万2019年4月

出典:Progressive Policy Institute


多くのアプリ開発の仕事はiOSとアンドロイドの両方のエコシステムで従事しているが、同レポートの内訳では167.4万人のデベロッパーの中87.3万人がiOSエコシステム、または135.9万人がアンドロイドエコシステムで活躍していると推定されています。

レポートの筆者が書かれているようにアプリエコノミーの従業員の数は、どれほどのスピードで社会のデジタル革命の次のステージ、つまり物質的な業界のデジタル化が実現するのかを示していると考えられています。

さらに広い経済的な側面

インドでは所得層や地域を問わずスマホの浸透が著しいです。それに伴い、あらゆるサービスの消費者または供給者に向けた多岐にわたるアプリがますます普及しています。そして、アプリインストールの統計もこの現象を反映しています。モバイルアプリデータを分析するアプリ・インテリジェンス企業Sensor Towerによると、2019年の第一四半期にインドでは45億のアプリインストール数があり、アメリカの30億アプリインストール数を上回って、世界の最大の数だと言われています。そして、アンドロイドのスマホが浸透しているためGoogleのプレイストアからのアプリのダウンロードが極めて多く見られます。

インドの経済研究シンクタンク ICRIER (Indian Council for Research on International Economic Relations) が2015年に発表された報告書によるとスマホの浸透率の各10%の増加につれて、国内総生産も1.5%増加し、それは技術のネットワーク効果による経済的な影響の拡大だと考えられています。同レポートは2024年までにデベロッパーの人数ではインドはアメリカを上回ると予測しています。


AppストアまたはGoogleプレイストアの低い配達費、更には小さいデベロッパーもスケールメリットが実現できることによって、アプリ業界は世界的なレベルで起業家の文化を生み出しています 。今後GitHubのインド事務所の設立、またFacebookやその他有力投資家によるインドの通信テクノロジー企業Jio Platformsへの大投資は従来の物質的な業界のデジタル化を更にスピードアップさせると期待されています。


インドに関して更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]


参考資料

Mandel, Michael, Elliott Long. The App Economy in India. Progressive Policy Institute. September 2019.

Kathuria, R., Chowdhury, S., et al. An Inquiry into the Impact of India’s App Economy. Indian Council for Research on International Economic Relations. April 2015.

Header Image: Shutterstock.com

中小事業におけるデジタル化の波

May 3, 2020 By Shivani Gopalkrishna

先月4月21日、Facebookはインドの革新的な通信企業であるReliance Jioへ57億米ドルの投資を発表し、同社の少数株(9.99%)を取得しました。 このニュースはビジネス界で大きな関心を集め、分析されました。その結果、この投資には以下の2点が特に重要であるといわれています 。

  • 現状の危機を乗り越えることがあらゆる中小企業にとって新たなビジネス拡大のきっかけとなる
  • アメリカの有力テック企業はインドのオンラインエコシステムに進出の競争が激化する

コロナウイルスの拡大によって生じる危機は特に中小企業へ悪影響を及ぼすと考えられています。この状況下でFacebookとJioのパートナーシップは、小売業界に必要な刺激となる可能性があります。Facebookの他、Google、Microsoft、Amazon、Ciscoのアメリカのテック企業は、インドの大手サービス企業との連携や起業家の育成の為の投資ファウンドの設立で、莫大な需要が望めるビジネスチャンスを掴もうとしています。

世界一のインターネットユーザー数を誇るインドでは、中小企業のデジタル変革が加速しています。


国の中心となる中小事業のキラナ店舗


インドには6000万の中小企業があると言われています 。その多くの事業は未組織の小売業界である日用品のキラナ店舗または生活用品の店舗です。全国にある約1500万のキラナ店舗は、 その地域の日常品のニーズを満たし自宅までの配送サービスも提供しています。

現在コロナによる異常な状況では、日常品をオンラインで購入する人が急増しています。しかし、E-コマース事業に大きな刺激を与えている一方、ロックダウンによる困難または物理的な不足がE-コマース事業の弱点を明らかにしています。 キラナ店舗は各近所にあるため、配達に関してラストワンマイルの物理的なハードルを超えることができます。こういった環境の中、Reliance Jioの食料雑貨事業JioMartとFacebookが運営するチャットアプリのWhatsappの間の連携はとても面白い試みです。

ユーザーは、Whatsappチャットアプリ内でJioMartの商品を注文し、JioMartによってその注文を最寄りのキラナ店舗に割り当てられ、請求書をWhatsappで発送します。この仕組みによってユーザーを最寄りのキラナ店舗とオンラインで繫がることを可能にしています。将来、商品の注文から決済に至るまでをWhatsappチャットアプリ内で完了することを目標しています。このようにWhatsappの非常に高い普及率(インドでは4億人が利用)を活かしてキラナ店舗のデジタル化が行われています。顧客が中小事業につながり、商品をオンラインで閲覧すること、商品に関する質問の回答を得ること、また支払いもオンラインで可能にすることでスマホでのシームレスのデジタルショッピング体験が実現します。

Reliance JioとFacebook、大手の両社は取得している巨大なユーザーベースにその他サービスを販売するチャンスを手に入れる上、消費者行動データの貴重な源となると予想されます。同様にその他の大手テック企業、アメリカの有力企業もインド社会・中小企業にデジタル変革をもたらしています。


世界一のデジタル市場を開拓するアメリカのテック企業


NASSCOM (全国ソフトウェア・サービス企業協会)のクラウド・サービス市場についてのレポートによると、2022年までにインドのクラウド市場は70億米ドルの価値を超え、SaaS市場も35億米ドルに達すると予測されています。インドにおけるデジタルサービスの迅速な採択の継続は、以下の企業活動の成果だと考えられます。

Google

通信企業Airtelとパートナーシップを構築し、Airtelのクライアントである2,500大手企業、また50万の中小事業のスタートアップに、グーグルドキュメント、ドライブ、カレンダーといったグーグル・クラウドのサービスを提供しています。事業のデジタル変革を促し、GSuiteによる協調ツールと生産性ツール、そしてAirtelのデジタルビジネスサービスは中小事業におけるデジタルイノベーションを実現しています。

Amazon

今年1月にAmazon創立者ジェフ・ベゾス氏はインドに訪ねた際に、インドの中小事業に10億米ドルを投資すると発表しました(当時、インドの商人組合がAmazonの略奪的価格設定へ抗議を行いました)。その投資は中小事業のデジタル化を促進し、より多くの顧客を引きつけ現地生産の商品の輸出を促すことが目的です。

Microsoft

MicrosoftはReliance Jioとの戦略的連携を図って10年間に渡るインド社会のデジタル変革を促進する予定です。それは通信ネットワークへの接続性をはじめ、コンピューティング、ストレージソリューション、及びその他サービス・アプリケーションの提供です。そしてMicrosoftのAzureクラウドサービスを活用するためにReliance Jioと共に全国にデータセンターを設立します。更にJioはMicrosoftのクラウドとプラットフォームサービスをスタートアップに無料で提供し、中間企業に定額の料金を徴収します。また、ヴォイスとコンピュータービションの統合的なサービスをインドの主な言語で開発する予定があり、より多くのユーザーが活用することを可能にします。

Cisco

2019年にアメリカの通信機器メーカーCisco社は、インド通信企業Airtelと共に中小企業へネットワーク接続性のソリューションを提供しました。同連携ではAirtelによってSD-WANネットワークがCiscoのプラットフォーム上に開発され、集中制御であるポリシー及び一般的な管理によって中小企業のデータフローが最適化されました。


インド経済の急速なデジタル化につれて、中小事業のニーズが進化しています。アメリカのテック企業は中小事業が抱くビジネスの可能性に対して熱心に答え、革新的なパートナーシップを構築し、デジタル変革を推し進めるためにあらゆるツールまたはサービスを提供しています。そしてそれは同大手テック企業にとっても大きな利益を生み出しています。インドの中小企業にサービスを提供しながら、彼らの数億人にもなる顧客の消費パターン(超ローカルの)のデータを解析し、それはデジタル広告ビジネスの貴重な収入源となり、また新たなサービスにつながると考えられます。


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参考資料:

Facebook’s investment in Jio takes on US tech firms betting on India. April 22,2020 

Google partners with Airtel to offer G Suite to small, medium businesses. January 20,2020  

Jio and Microsoft announce alliance to accelerate digital transformation in India. August 12, 2019

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スマホゲーミングの爆発的人気

April 27, 2020 By Shivani Gopalkrishna

世界中におけるコロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響で、ストリーミングエンタテインメント業界が賑わいを見せています。またFacebookはゲームストリーミングアプリのローンチを2ヶ月繰り上げしロックダウン中の人々のエンタテインメントニーズを満たしています。

インドでも3月下旬にロックダウンが発令されて以降、スマホゲーミングアプリのダウンロード数はうなぎ上りです。明らかにこの2〜3年はスマホゲームの成長が加速しています 。更にマネジメント・コンサルティング会社KPMGとGoogleが共に発表したレポートでは、インドのオンラインゲーミングは2021年までに11億米ドル産業に達すると予測されています。


ロックダウンの影響

ロックダウンの環境により、家族や友人と一緒に楽しめるマルチプレイヤーゲームの人気が高まっています 。 その中でも戦略的なボードゲーム、ポーカーまたはラミーのようなカードゲーム、ファンタジースポーツ、クイズといったジャンルが人気です。ユーザーは他人との競争や勝負を楽しみ、友人またはその他プレイヤーの間で高い評価を得ることによってマルチプレイヤーゲームに夢中になり、エンゲージメントの急増につながっています。ユーザー数の増加の上、アプリに割く時間が伸び、時間帯も昼夜問わずバラバラです(特に昼間のユーザーが増加)。

会社ゲームデイリーアクティブユーザー数ロックダウン次第ユーザー数の成長率
Paytm First Games200ゲームの中賭博ゲームのラミーが最も人気50万人200%
(毎日7万5千新規ユーザー)
Gameberry LabsLudo, Parchisi の戦略的なボードゲーム350万人300%
Poker Dangalポーカー6500人35%
Adda52Rummyラミー1万人200%
Rein GamesReal Money Ball Pool(唯一のゲームである)1万人(平均冷やす時間=60分)2〜3倍

双方向エンターテインメントかつ金銭的な利益となるゲーム

インドでは、ラミー、ファンタジースポーツにおける賭博ゲームは合法です。そして儲けを得るには、運だけではなくある程度のスキルが必要になります。

その背景を活かしてPatytm First Gamesをはじめ、ファンタジースポーツのユ二コーン会社Dream11及び数多くのゲームは報酬(お金 、新モデルのiphone、海外旅行など)を与えています。報酬の規模を理解するためにPaytm First Gamesの例を挙げましょう。同社は毎月1億インドルピーの報酬を与えてユーザーベースを拡大しています。 そしてPaytmの収益の40%は、ギャンブルのゲームが占めています。

Dream11は国民的競技であるクリケットの他、サッカー、バスケットボール、伝統的なカッバディというスポーツのファンタジーゲームを提供しています。8000万人のユーザーを獲得したDream11は、大手中国企業テンセントから1億米ドルの資金を受けて、昨年ビジネスインテリジェンスプラットフォームのCB Insightsよりユニコーンとして評価されました。

2019年に発表されたKPMGインド社のメディア・エンタテインメントレポートによるとARPU(ユーザー1人当たりの平均売上)またはユーザー数の増加の傾向によってオンラインゲーミング業界の成長は以下の表のようになると言います。

オンラインゲーミング産業の評価2020年度2021年度2022年度2023年度2024年度年複利成長率(2020年度〜24年度)
10億インドルピーの単位87.8118.5154.0200.2250.332%
インドのオンラインゲームのユーザー数2018年度2019年度2020年度(予測)2022年度(予測)
100万人の単位269300365440

2020年〜2024年の成長は、地方のユーザーが後押しすると考えられます。

スマホゲームの有望な将来

2月24日にムンバイで開催されたマイクロソフトのイベントで、CEOサティア・ナデラ氏とインド最大の民間企業リライアンス・インダストリーズの会長であるムケーシュ・アンバーニー氏との会談で、アンバーニー氏はインドのゲーミング産業について次のように述べました。

ゲーミングを知らない世代の人々には想像しにくいですが、ゲーミングは音楽、映画、テレビ番組を組み合わせたものより大きなコンテンツになると思います。

ムケーシュ・アンバーニー氏

Source: Microsoft News

2016年に定額のスマホデータの提供によってデジタル革命を引き起こしたアンバーニー氏によると、若者人口の多さと巨大なインターネットユーザーベース(世界の2位)が、スマホゲーミングの著しい成長のきっかけだといいます。

さらに、以下の傾向はスマホゲーム産業の成長を支えると考えられます 。

ユーザーのベースの拡大
  • 手頃なスマホ(2022年までに8.5億人のユーザー数に達成すると予測される)または定額データ契約プランの普及。
  • インターネットスピードの向上。
  • ユーザーベースは18才〜45才であり、ロックダウン中の30代と40代のユーザーの増加。
  • 女性ユーザーの増加。
  • 2021年までに5.4億人のユーザーが現地の言語でインターネットをアクセスするという予測による多言語でのアプリの提供。
リアルマネーゲームの人気
  • ファンタジースポーツリーグ、カードゲーム、クイズゲームは急成長している。
  • 向上心に溢れるインドの若者は、金を稼ぐことまたはエンターテインメントであるリアルマネーゲームに惹かれている。
  • マルチプレーヤーゲームはインタラクティブであり、その他プレイヤーと一緒にゲームを楽しめること、競争できること、また、友人やその他ゲーマーから注目されることが重要である。
  • 報酬または自分のコミュニティから認知を得るという願望が満たされる。
充実したエコシステムの構築
  • 90%のゲーマーはスマホでゲームをするためソーシャルメディア、デジタル決済、E-コマースなどのあらゆるアプリまたはサービスに繫がることができる。
  • スマホを中心にソフトバンク、アリババ、テンセントといった大企業かつ投資家の事業が成功している為、彼らにとってインドのスマホゲーム業界は魅力的であり、投資している。
  • メディア・エンターテインメント・食事配達・デジタルペイメントアプリのような取引事業は顧客の確保または保持する為のマーケティングにゲームを活用している。例として食事配達サービスZomatoや決済アプリGoogle Payが挙げられる。両者はファンタジークリケットのゲームを自社のアプリで提供し、報酬として自社のサービスで利用できるポイントや賞金を与えている。
  • プロのプレイヤーの急増。
  • スマホゲーム業界は有能なアプリ開発者、エンジニア、デザイナーを誘致している。

スマホゲームに夢中な若い世代はテレビや映画より、ゲームが提供する没入型のプレイヤー体験、刺激、コミュニティーからの認証または報酬にハマっています。そして、インドのデジタル革命によっていわゆる「次の10億人のユーザー」は地方にある小さい町・村から出てきます。このユーザー層にとってスマホは世界への鍵であり、唯一のエンターテインメントのデバイスです。都市部のユーザーであれ、地方のユーザーであれ、強い熱望を抱いている若者はオンラインゲームを通して野望を自己実現すると思われています。そして、この需要はイノベーションのきっかけになり、より洗練されたゲーム体験、または改善されたユーザーエンゲージメントに繫がると考えられています。


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表1の出典:

Economic Times. For Indian gaming startups Covid-19 lockdown is a boon for business. 2020年4月13日
Yourstory. Online gaming startups see a surge as India locks down to fight coronavirus. 2020年3月31日

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インドにおけるクラウドファンディング・プラットフォームのブーム

April 21, 2020 By Shivani Gopalkrishna

コロナウイルス感染の拡大に伴う5週間に及ぶロックダウンは、インド に新たな危機をもたらしています。中でも都市部で働く地方からの移住労働者は、ロックダウンにより賃金を稼げず飢餓に直面した過酷な状況下にいます 。

ニュースでロックダウンが話題になった瞬間に、あらゆるNGO、食事を配達するスタートアップ、大手企業などが動き始め移住労働者に食料または金銭的な支援のための資金を調達し、リソースを動員しました。そのあらゆるキャンペーンはかなり早い段階で大きな影響を与えています。インドで有意義なキャンペーンが実現した理由の一つに、クラウドファンディングプラットホームが充実していることが考えられます。

クラウドファンディングプラットフォームの著しい成長

 現在のロックダウンの最中に共有タクシーサービスのUber社は、病院や食料のような生活に不可欠のサービスへ通勤や配達のための車を提供しています。更に同社はドライバー達の生活をサポートするために、Milaap というクラウドファンディングプラットホームで「Uber Care Driver Fund」のキャンペーンを通して資金を調達しています。下の画像は同キャンペーンのスクリーンショットです。


感情に訴えるストーリーテリング

クラウドファンディングアプリ(スマホ・ウェブ)では良いUXデザインが活用されていてユーザーは簡単かつ直感的に資金調達のキャンペーンを作成することが出来ます。キャンペーンの成功は、インパクトのあるストーリーにかかっているのでキャンペーン中は写真またはビデオを投稿し、支援者に思いが伝わるように魅力的なテンプレートで提供しています。また医療キャンペーンの場合、病院側が治療に関する情報などを提供することによって、透明性または信頼性を高めています。キャンペーンの目的によってマーケティング専門家からのキャンペーンの作成や実行に関してのコンサルティングサービスを受けることが出来ます。

Uber Care Driver Fundもストーリーを活用してユーザーである市民の心へ伝わるようにしています。

スマホの高い普及率・FacebookやWhatsAppの巨大なユーザーベース

2019年第三四期に発表されたFacebookのユーザー数は主にインドとインドネシアだといいます。インドではマンスリーアクティブユーザー数は3.28億人であり、同社が運営している大人気のチャットアプリWhatsAppは、4億人(世界人口の約3分の1 )という極めて多いユーザーが利用しています。

クラウドファンディングキャンペーンの作成者は自身のネットワークを活かせる理由から、キャンペーンの成功はソーシャルメディアやチャットアプリの普及率に依存していると考えられています。クラウドファンディングプラットフォーム運営側も保有するネットワークを使ってキャンペーンの宣伝を行っています。

そして宣伝の他、金銭の振り込みもスマホで簡単に行えるようにデジタル化しています。スマホ決済アプリのPaytmやインド政府が運営しているデジタル決済プラットフォームやクレジットカードで手続きが可能です。

Uberのキャンペーンでは FacebookまたはWhatsAppの共有ボタンがあり、またデジタルペイメントPaytmやUPIへのリンク機能もあります。

医療のためのクラウドファンディング

インド 政府の貧しい人々に向けた健康保険は、がんの手術や移植手術のような特別な治療に対して資金が全く足りていません。また、貧しくない中間層は政府の健康保険が使えないため治療費の支払いに追われています。そして全体の約2割のインド人しか民間保険を持っていないといわれています。

保険に入っていない多くのインド人にとって、高い民間医療と不足している国民医療保障制度の間の大きな隔たりを埋めてくれるクラウドファウンディングプラットフォームは、人気の選択肢です。ImpactGuru、Ketto、Milaapといったプラットフォームは重要な架け橋を提供しています。同クラウドファンディングプラットフォームの6割のキャンペーンは医療のための資金調達が目的です。

Milaapでキャンペーンを作成または実施する方法

クラウドファンディングは医療に欠かせない為、クラウドファンディングプラットフォームはApollo, Aster, Fosterという大手民間病院グループとの直接的な関係を構築し、シームレスな資金調達キャンペーンを実現しています。病院と深い関わりがあるためキャンペーンに専門医師から治療の必要性の説明、また治療の請求書が確かめることができ、キャンペーンの透明性に繋がります。

2018年に大手病院グループApollo Hospitals Groupは、ImpactGuruに200万米ドルを投資し、各地70棟の系列病院の患者がImpactGuruのプラットフォームを利用して無料でキャンペーンを作成することを可能にしました(病院側は手数料を支払っています)。


上記のようにクラウドファンディングプラットフォームは、従来の制度の隙間を埋めようとしています。この現象は医療分野で一際目立って現れている一方で 、教育、社会的な活動、クリエーターのプロジェクトなどの新しいビジネスアイディアの実現に至るまでクラウドファンディングが活用されています。同サービスは、良いプロダクトデザインによって信頼性を確立しています。そしてクラウドファンディングが日常生活に普及したことによって全般的にマインドセットの転換が起き、インド人がデジタルに精通していることを強く印象付けられます 。


インドに関することを更に詳しく知りたい方は、こちらのメールアドレスへご連絡ください:[email protected]

「キラナ」店舗 – インド小売市場の珍しい現象

December 3, 2019 By Shivani Gopalkrishna

インドを訪ねたことがある方が気付くように 、お米やレンズ豆、スパイスといった食材から石鹸、モップ等の日用品に至るまでを販売する伝統的な店舗は、高所得層の地区であれ、スラム地区であれ、インド中どこでも普及しています。そしてこの伝統的で小さな未組織の「キラナ」店舗は、大型スーパーやチェーン店よりもはるかに多く存在し、全国では約1500万のキラナ店舗があると推測されています。

最近キラナ店舗は話題を呼んでいます。世界の有名な事業へ投資をしているシリコンバレーに位置するベンチャーキャピタル企業 GGV Capitalおよびその他の有力投資家は、キラナ店舗の効率向上を支えるスタートアップに投資しています。その投資は彼らの地域にEコマース事業、そして融資を行うシステムを強化するためだと言われています。

この数年間、近代的な大型スーパーやチェーン店やECが進出してもキラナ店舗は活発な商売を続けています。Indian School of Businessに属する小売専門家Siddharth Singh教授によると、急速な都市化が行われていても伝統的なキラナ店舗はなくならないと言われています。Singh教授が行ったリサーチでは、キラナ店舗と大型スーパーにおいてある大手日用品の約10万件販売取引を分析しました。その結果、地方都市または田舎では、キラナ店舗と大型スーパーにおける月ごとの販売の差は減少しつつあり、そして大都市を含む全ての地域で収益性が向上し続けています。このリサーチでは、通常に反して既にキラナ店舗の収益性は、大型スーパーの収益性より高いと報告されています。

Image Credit: Shutterstock.com

キラナ店舗の特徴


  • 顧客と友好関係を築く

キラナ店舗は、ローカルコミュニティと強い絆で結ばれています。個人顧客との関係を構築しているため、個人のニーズに応えて特別な注文、または特別な量を発注します。更に掛け買いのオプションもあり、個人顧客にパーソナライズされたサービスを提供しています。

そして顧客は、このようなサービスの利便性そして比類なき価値によりキラナ店舗と親善を深めています。

  • 柔軟性がある

上記の通りキラナ店舗は、顧客が求める品物が大量であれ小量であれ個人にカスタマイズされたサービスを提供しています。シャンプーのような日用品、お菓子などを少ない量でも販売し、低所得者でも購入できるようにしています。

また値引き、あるいはいくつか商品をセットとして販売し、あらゆる販売促進も行われています。

  • 進取の気性がある

キラナ店舗は、2017年に導入された物品・サービス税 (GST) に従うために、店舗販売時点情報管理(POS) のデジタル化に積極的です。デジタルワレットも意欲的に生かしていて、キャッシュレスの取引も可能にしています。

大型スーパー、EC事業による競争を承知しつつ、顧客のニーズを満足させるために様々な取り組みを強化しています。その一方で、Reliance Retail のような大手小売企業は、巨大なキラナ店舗のネットワークにおける大きなビジネスチャンスを見出そうとしています。


キラナ店舗のアップグレード

大手企業 Reliance は、中国で小売業の変革を導いたAlibaba社のように2023年までに50万店のキラナ店舗のデジタル化を目標としています。Reliance Jioが通信業に導いたデータ革命での成功を、小売業でも再現しようとしています。「ニューコマース」と呼ばれる取り組みであり、Reliance Retailが運営するEC事業、近所ストア、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、卸売事業とキラナ店舗を繋げるハイブリッド・オンライン・オフラインモデルを実現する予定です。それはAlibabaが導入したオンラインとオフラインを繋ぐマーケットプレスに似ています。

Reliance社の目的は、全国の小売ネットワークを強化するためにキラナ店舗をサプライ・チェーンに統合してラスト・マイル配達の役割を果たすパートナーとしてプラットフォームに加えることです。また一方で、Reliance Jioはキラナ店舗の個人運営者向けデジタルPOSを開発し、低価格でシステムを販売します。

そしてオフラインであるキラナ店舗の統合によって、Relianceの新しい小売プラットフォームでは、顧客のオフラインの購入に関するデータも収集することになります。その上、プラットフォームは同社のEC事業とキラナ店舗を結ぶため、顧客はオンラインで商品を検索し、決済し、実際の店舗へ商品を取りに行くことを可能にしています。この制度によってローカルな需要に応えられる上、Relianceによるコストの削減が実現します。更にキラナ店舗のおかげでReliance Retailが導入されていなかった地域にもアクセスが可能になります。


田舎、大都市、地方都市での多様な市況の背景に、進み続ける都市化 、所得の増加、10億人市場のインターネット利用率の増加があります 。地方に暮す消費者が、インターネットから情報を得て生活の質を向上させたいと野心に駆られることは、小売業の需要に大きな影響を与えています。このような理由から、インドの小売業は変動的な状況であると考えられています。この波にさらされて伝統的なキラナ店舗も向上心に燃えて意欲的にテックを採用しようとしています。そして彼らはこれからもパーソナライズされたサービスを提供し、顧客と信頼関係を築き続けます。キラナ店舗は、インドのローカルコミュニティを支えるバックボーンと呼べるでしょう。


参考資料:

Singh, Siddharth. “Kirana Stores Are Here to Stay: FMCG Strategy for Indian Retail.” ISB Insight, October 2018.


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